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 2019年9月11日に行われた鹿児島市議会の自民みらい会派 うえだ勇作議員による代表質疑「LGBT施策等への慎重な対応について」の発言に対し、私たちレインボーポート向日葵は本日9月12日に抗議文を提出しました。

 下記は自民みらい会派宛に提出した抗議文です。

(当文章の転載・二次使用・SNS等ネットワーク、メール送信などを固く禁じます)

 

 

 

 

 

2019年9月12日

鹿児島市議会 自民みらい会派 御中

指宿市・鹿児島市 LGBT交流会

レインボーポート向日葵

 

抗議文

 

 貴会派は、鹿児島市議会令和元年第3回定例会(令和元年(2019年)9月11日)のうえだ勇作議員による代表質疑「LGBT施策等への慎重な対応について」において、「同性カップルに育てられた子供に精神的な悪影響が見られる」、「神の与えたもうた自然の摂理に合った男女の性の考えを強調する」などといった発言を行いました。

 鹿児島市議会は言論の府として、多様な発言を許可し、その上で質疑のやりとりの中で施策等の可否を判断するということは理解を致していますが、これらの発言は、性の多様性とLGBT当事者(以下、性的マイノリティを包括する表現として「LGBT」といいます。 )を傷つけその人権を否定するものであり、私たちは決して看過することはできません。

 また、「まずは大きな差別要因となっている他の人権に行政として力を入れて取り組むべき」、「(パートナーシップ制度の)利用は男女の婚姻に比べ極めて低く、ニーズはほとんどない」といった発言は、LGBT当事者の存在やその声を軽んじるものであると感じております。

私たちは、これらの発言に強く抗議し、発言の撤回と謝罪、LGBTについての正しい知識の習得を求めます。

 

 

 私たち「指宿市・鹿児島市 LGBT交流会 レインボーポート向日葵」は、LGBT当事者と理解者による会で、鹿児島県や近県に在住するLGBT当事者の生きづらさに寄り添い、「一人ではない」と当事者が感じ、安心して自分らしさを出せる居場所を提供するために、毎月交流会を開催している団体です。また、本年は、鹿児島県からの受託事業として、「LGBT理解講座」を市民向けに開催しております。

 

 全国では、26以上の自治体が「パートナーシップ制度」を導入し、または検討しています。九州・沖縄では、福岡、北九州、長崎、熊本、宮崎、那覇の6市が導入しておりますが、鹿児島市においては残念ながらまだその検討すらされていない状況です。このたびの貴会派の代表質疑は、鹿児島市におけるLGBTの割合の低さを理由とし、LGBT施策については慎重な態度をとるように市長に求めるものでした。

 しかし、2015年から開催している私たちのグループの交流会には、多数のLGBT当事者が参加しており、また多くの相談が寄せられていることは事実であり、鹿児島市内のみならず鹿児島県内には、LGBT当事者がたしかに存在していることは明らかです。

 また、2016年には、日高庸晴氏(宝塚大学看護学部教授)によって国内最大の1万5千人規模でのLGBT当事者の意識調査が全国的に実施され、LGBT当事者のいじめ被害の割合として、47.8%~68.0%(セクシュアリティ別によりばらつきあり)という数字が報告されており、LGBT当事者が差別意識・偏見・無知の対象となっていることが分かります。私たちは、当事者および理解者として日々身をもってこれらの差別意識等を感じております。そのような状況の中で、代表質疑におけるうえだ議員の発言は、冒頭に挙げたとおり差別・偏見と捉えられる内容が多数含まれており、LGBTに対する理解を増進させるどころか差別を助長する内容となっております。また公の場である市議会でそのような発言をすることで、現に鹿児島市で生活する当事者だけでなく、全国にいる当事者の尊厳をひどく傷つけ、苦痛を与え、そして差別する、決して看過できない暴言です。

 

 さらに、この代表質疑によってLGBT当事者である子どもたちが受けたであろうショックは計り知れません。「同性カップルに育てられた子どもに精神的な悪影響」、「神の与えたもうた自然の摂理に合った男女の性の考え」という発言は、現に自身のセクシュアリティについて不安や悩みを持つ子どもをさらに絶望に追いやりかねない発言です。

 また、うえだ議員が引用された子どもの権利条約第7条第1項の日本政府訳は「児童は(中略)、できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する。」であるものの、原文(英語)は、「parents」(親たち/両親)という単語を用い、「父母」に限定していません。また、アメリカのコーネル大学「WHAT WE KNOW」プロジェクトの調査結果において、同性カップルに関する79件の学術調査のうち、75件の調査において、同性カップルによる子育ては子どもに悪影響を与えているとは認められておりません。うえだ議員が言及されたポール・サリンズ教授による調査を含む残りの4件の調査は、すでに壊れた家庭における子どもをサンプルとして調査したものであり、信頼性の低い調査結果であることが指摘されています。「自然な男女の親によって育てられることが基本」であり、「子どもの福祉の根本」という貴会派の質疑内容は、条約や学術調査の不十分な理解に基づき、一方的に、LGBTに対する偏見や差別を助長するものであり、到底容認できるものではありません。

 

 貴会派の代表質疑において、パートナーシップ制度の利用数が少なく、「ニーズがほとんどない」という指摘がありましたが、利用数の少なさは、現在の社会が性的少数者であるために差別や偏見を受けてしまうことへの恐怖からくるものであります。問題の本質はこのような「恐怖」を生んでしまう社会の差別構造にあります。代表質疑での発言こそが、この差別構造そのものを現わしています。現在の社会の中で「いない」とされ、またメディアなどにおいて揶揄や嘲笑の対象となることの多いLGBTへの理解は、自治体や国によるLGBT施策や法整備がなければ進まないことは明白です。LGBT施策が自治体や国主導で進められ、同時に国民・市民の理解を促進し、差別や偏見を根絶する啓発活動や教育を行うことにより、はじめて貴会派の指摘された「国民・市民の十分な理解」を得られることに繋がります。

 LGBT当事者も、LGBT当事者ではない国民や市民と同じように、日本国憲法上、尊重されるべき「個人」です(日本国憲法第13条前段)。私たちは、「特別な保護」を求めているのではなく、LGBTに対する差別や偏見のない社会で、自分らしく生活できるようになることを求めているにすぎません。うえだ議員の発言に、「まずは大きな差別要因となっている他の人権に行政として力を入れて取り組むべき」というものがありました。しかし、差別や偏見がなく、すべての人が自分らしく安心して生活できる社会を実現するためには、人権に関する施策はすべて重要な課題であり、同時に取り組みを進めるべきと考えます。差別に大小はないのです。

 

 私たちは、貴会派代表質疑における、LGBTに対する誤った理解や偏見に基づく発言に対し、強い遺憾の意を表明するとともに、あらためて冒頭に述べた発言の撤回と謝罪並びにLGBTについての正しい知識の習得を求めるものであります。

以上

 

 

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